2017.03.24 担当:一也
- [九羽目]
……この企画まだやってたのか?
暫く呼ばれなかったし、もう終わったと思ってたけど。
- 終わってません。
その、『まだ打ち切りしてなかったの?』みたいな反応やめてくれない? - そもそも染谷はなんでそんなにやる気に満ち溢れてるんだ?
- ……やる気っていうか。
なんか、こういう集まりないと一也に会えないじゃん。 - …………?
- え、自覚なかったの?
おまえってゼミ室に人がいると寄りつかないし、サークルなんてほぼ幽霊だし。 - ……そうか?
- そうなの!
ここなら俺が妹ちゃんにちょっかいかけないようにって見張りに来るっしょ? - ……自分で言ってて虚しくないのか?
- 虚しさよりも寂しさのが上っつーか。
俺、最近そういう羞恥心っていうの? 気にしないことにしたの。 - へえ……。
- 大きい心で! 常に大局を見るって大事だと! 気付いたのです!
- へえ……。
- ちょっと一也?
もう少し聞いてるフリしてくれてもいいと思うんだけど。だからシスコンって言われんだよ。
妹ちゃんが可愛いのは認めるけど、そんなんじゃいつまでたっても彼氏できああああいだいいだいいだい!!!!!! - おっま!
力込めすぎだろっっ!!!! 頭割られるかと思った!!!! - 悪い。無意識。
- こっわ……。
無意識に人の頭鷲掴むのかよ……。 - で?
- ん?
- おまえは何が心配だったんだよ。
- …………?
- 俺に会いたいとか気色悪いこと言ってたけど、要は、不安定に見えたんだろ?
- まあ、妹に関してはちょっと心配性なところもあるかもしれないけど自分では普通なつもりだ。
けど、おまえにはそう見えてない。
だから、へらへら笑って冗談めかして様子を見てる。 - あ、あー……うん。
そんなガチなやつじゃないんだけど……まあ、そんなとこ。 - 一也って妹ちゃんのことになるとさ、なんか結構無茶するっていうか……。
- ……ごめん。
自分でも何言いたいのか分かんない。 - …………。
- 家族の問題に安易に立ち入ろうってんじゃないけど、俺はもっと一也にも――
- ……まだだめ?
- うん。
今、邪魔しちゃいけない雰囲気。 - えー……。
染谷くんが寂しいとか一也くんがちょっと変だとか、別にどうでもいい……。 - でも、染谷さんが珍しく真面目な話してるから。
ちょっと待っててあげよう? - ……暇。
- じゃあ、何かして遊ぶ?
- 遊ぶ!
あの子も呼んできてさ、一緒に―― - それ、俺も混ぜてくれる?
- ……あれ? 染谷くん。
- 一也兄さんとの密談終わり?
- ……その表現やめて。
結構真面目な話してたのに、君らの話し声聞こえてきて台無しだよ。 - 染谷さん、なんか疲れてる?
- 今日はもう解散します?
僕らは染谷くんにも一也くんにも用はないですし。 - ……一也といい、君らといい、一向に懐いてくれないね。
- ふふ。
染谷くんと仲良くなることは一生ないと思います~ - 彼女に近づかないなら、たまには相手してあげるけど。
- ……ほんっとに可愛くない。
いいよ。今日はもう解散!! - はーい。お疲れ様でした~
- ん。じゃあ……ばいばい。
- はいはい、またな。
……って、ちょっと待って待って! - えー……もう終わりって言ってたのに。
- いやあのさ、今って3月で卒業時期じゃん?
一応なんかそういうお祝いだけやっとこう。 - お祝い?
- そ。卒業や新生活を迎える子にメッセージ的なの!
- ……僕ら、一応まだ高校生ですよ。
- そこはホラ、在学生代表ってことでさ。
- んー……。
- 僕、ちょっと不思議に思ってることがあるんですけど。
卒業って寂しいものなんですか?
中学を卒業するときにクラスメイトが泣いたりしてましたけど、その理由が分からなかったんですよね。
ねえ、卒業したら会えなくなるわけじゃないんですよ?
進学とか社会人とか、環境が変わったら会う時間は減っちゃうけどそれでも僕は何があってもあの子と離れるつもりはないですし、会えなくなる未来なんて考えられない。
だからもし、卒業を寂しいって思ってる子がいたら、大好きな子に寂しいよって言ってみてください。
きっと……ぎゅって抱きしめてくれますよ。 - ……俺も夏木と同じ意見、かな。
寂しいなら寂しいって口に出して言えばいいんじゃない?
我慢する必要はないし。
会えなくなるって不安に思うのは、自分が会おうとしなくなるかもって思ってるの?
そうじゃないなら……心配する必要ないよ。
んー。
俺も、あんまり素直に言うの得意じゃないから気持ち分からなくもないけど、もしアイツに会いたいって言われたら……。
何があっても絶対に会いに行くと思う。 - おー結構真面目に答えてくれてる。
じゃあ最後は俺から。 - 卒業や新生活を迎える子は、本当におめでとう!
大変だった受験や就活を乗り越えたんだから、新生活もきっと大丈夫!
……なんて。
無責任なこと言っちゃうのは違うか。
受験や就活が終わったからって 新生活の不安が無くなるわけじゃないよな。
まあ、そんなときはアレだ。
弟くんが言ってたみたいに、恋人とか家族とか友人とかさ……大事なやつに寂しいって言ってみ?
今君が欲しい言葉をきっとくれると思う。
起こっていないことを不安に思うぐらいなら、起こってから悩めばいいって!
(これ、うちの大学の就活窓口に格言っぽく書いてあった) - んー……こんな感じ?
いつのまにか一也は帰っちゃってたから、次回アイツにも何か言わせるよ。 - まあとりあえず、みんな笑って4月を迎えようぜ~