2017.02.03 担当:夏木
- [七羽目]
僕は泣き虫じゃないもん
……泣いてばっかりって思われたら嫌です。
僕ははると彼女のことが大好きだからたまに寂しくてちょっとだけ泣いちゃうけど……。
でも、あんまり泣いてばかりだとはるがもっと泣けなくなっちゃうから……我慢する。
- 別に泣き虫でもいいんじゃない?
- 大事な人の前でだけ見せる顔っていうの?
そういうの恥ずかしいことじゃないと思うけど。 - ……んで。
- ?
- なんで染谷くんなの!?
なんではるじゃないの!? - なんでなんでって……。
君ら双子は本当にそっくりだな! - じゃあ俺、帰っちゃうよ!?
兄貴が来るまで一人で寂しく待ってろよ! - え……。
- 寂しくなってまた泣くんだろ?
そんで兄貴に慰めてもらう……と。
あーあ。高校生にもなって情けないなあ~ - ぼ、僕は……。
はるに慰めてもらうために泣いてるわけじゃ……ないもん……。 - 俺はちょっと関心してたんだよ。
- え?
- 自分が泣いてばっかりだから兄貴が泣けないって言ったじゃん?
そういう言葉ってさ、相手を大事に思ってなきゃ出ないし、やっぱり兄弟っていいなって。 - ……染谷くん。
- あれ? もしかして弟くん照れてる?
俺の言葉に感動しちゃった? - 染谷くんって色々台無しですよね。
人として。 - そこまで言っちゃう!?
- …………でも。
ありがとう……ございます……。 - ……どういたしまして?
はは。なんか変なところで律儀なやつだな~ - この前、兄の方とも話したけど、君らって一人でいると結構普通な。
- まあ、ちょっと過保護? っつーか、いき過ぎてるな~とは思うけど。
- 染谷くん。
- 僕、はるのこと迎えに行ってきますね。
染谷くんは一人でお留守番しててください。 - え?
- 染谷くんは一人で楽しそうにおしゃべりしてますし、いいですよね?
- 一人じゃないよね?
俺、君と話してたつもりよ? - (夏木が立ち上がる)
- え、マジで言ってる?
だったら俺帰りたいんだけど……。 - (にっこり笑って)はるとすれ違いになったら困るのでここにいてください。
- 僕ははるがいないと寂しいけど、染谷くんは一人でも寂しくないんですよね?
だったら一人でお留守番できますよね? - ……弟くん。
兄貴と会えてもここに戻ってくるつもりないでしょ? - …………。
- だからさあ、そういうところがガキなんだって!
- 僕は子どもじゃないって言ってるじゃないですか!!
- あれ?
夏木と染谷さんが……なんか仲良くなってる。 - ……あれは、仲良いっていえるのか?
- 夏木がちょっと楽しそう。
- ……まあ。
似てるんだろうな、あの二人。 - お前らって学校でもずっと一緒なんだろ。
たまには別行動でもして慣れてった方がいいんじゃないか? - それは……。
- 社会に出てからも兄弟一緒ってわけにはいかないだろ。
夏木がベッタリっていうなら……。 - 違う。
夏木のせいじゃない。 - …………。
- 夏木は確かに甘えん坊だし、いつも一緒に居たがるけど。
本当は俺が……離れられないだけなんだ。 - ……春木。
- このままじゃ駄目かな。
ずっと一緒って……絶対にしちゃいけないこと? - ……依存し続けることが必ずしも悪いことだとは……言えない。
- ただな、春木。俺は、離れろって言いたいわけじゃない。
- 二人一緒でもいい。でも、ずっと二人だけでいいわけじゃない。
- …………。
- ま、ゆっくり考えていけばいいさ。
- 一也兄さんって、俺よりもちゃんとお兄ちゃんしてるね。
- (一也が春木の頭をポンポンと叩く)
- 俺からしたら、お前らは手のかかる弟二人だけどな。
- はる!!!
- 一也!!!
- ……夏木。どうしたの?
- 染谷くんが酷いんです!
- 一也聞いて!
こいつマジで話が通じない! - さっきまで仲良かったのに。
- 仲良くなったことなんてないよ!
- そうだ。仲良かったことなんてない!
- …………。
- ……一也兄さん。
- いや、無理。
- 弟なんでしょ?
- ……一人、違うの混じってるし。