Vol.5 アンリ・ランベール
Track 01 midi

フランス・ボルドーへと移り住んだふたり。
引っ越しの日、荷解きが済むとアンリは主人公に街を案内する。


「……君の反応を見るに、グロース・クロッシュに来たのは正解だったな」

「見えるかい? ガロンヌ川が三日月のように流れている。夕陽に照らされて……、少し、眩しいくらいだ」

「月の港と呼ばれるようになった理由が、よくわかる。……どうかな。この街は好きになれそう?」

「良かった。……ただ、私としては、ひとつ、気にかかることもあるのだけれど――」

「……ボルドーは学生街でもある。大学が多いからね。今日も君とそう歳の変わらない青年を、たくさん見かけた」

「……こんなことを言うのは、子供じみているが……。君を見ている男も少なくはなかったよ」

「もし、君をひとりにすれば、彼らは、きっと声をかける。……少し、心配になった」


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